カランコロン。連れ添う音を亡くした草履の行方は、黄昏をさまよっているかのようだ。ほっそりとした手には手折ったばかりの花が握られている。そうして橋のたもとまで来ると、無造作にそれを放ってしまう。彼方に届くわけもなく、赤い曼珠沙華はゆるりと流れている。これは償い。哭けない私を赦してと
カラン……、カラン……。
連れ添う音を無くした草履の足取りは、黄昏をさまよっているかのようだ。
空は黄金色に染まっているが、山の影になっているここは既に夜の闇だ。青白い顔も着崩れした黒の小袖も影に呑まれている。
ほっそりとした手には手折られたばかりの花が一輪握られている。
カラン……、カラン……。
やがて橋のたもとまで来ると、振りかぶることもなく無造作にそれを放ってしまう。大きな弧を描くこともなく、彼方に届くわけもなく、赤い曼珠沙華はゆるりと流れていく。水面は空の色を反射して黒と金のコントラストが美しかった。
あぁ、やっぱり届かない
これは償い。
哭けない私を赦して、と今日も川辺に立って花を見送る。
上部は140文字小説。下部掌編に書き直したもの
2010年10月 ブログ「花と月の遊び」にて公開作品
2013年1月 サイト公開
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